Harold Mabern(P)
George Mraz(B)
Joe Farnsworth(Ds)
Rec. October 1st,2001,NY (Venus Records TKCV35099)
未開封盤聴き。
ハロルド・メイバーンとジョー・ファンズワースを生で観たのは、2000年の南郷ジャズフェスにおけるエリック・アレキサンダー・カルテットでだった。本作はそれより1年後の録音なのだが、私の場合は一度生を体験してしまうと、その後にリリースされるCDは買ったとしてもあまり聴く気がしないというパターンがよくある。特にレコーディング・メンバーが似通っていたりするとなおさらだね。ライブの感動にいつまでも浸っていたいという気持ちが強いのと同時に、どう考えてもスタジオよりもライブでの演奏の方がいいに決まっているということがあるからなぁ。というわけで本作も今までずっとCD棚に眠っていたのだが、未開封盤も残り数枚となったところでようやく手が伸びた次第。その間にメイバーンは弟子であるエリアレのバンドを抜けちゃったけど、そろそろヴィーナスからも離れてまたDIW時代、あるいはもっと過去の作品のようなガツンとしたアルバムを作ってほしいものだと願っている。06年リリースの「Harold Mabern Trio/Somewhere Over The Rainbow(別頁あり)」も、せっかくドラマーにウィリー・ジョーンズIIIを配しているのにもかかわらず、あまり良い出来ではなかったからね。
1曲のオリジナルとスタンダード・ナンバーを中心に全10曲。
この力強いピアノのタッチは紛れもなくメイバーンなのだが、それでもなんかいまいちしっくりとこないのは選曲の関係に他ならない。私としてはできればモーダルな曲調のものでガンガン攻めて欲しいと思っているんだなぁ。元々マッコイ・タイナー節が炸裂する人だからね。まあ彼の新たな魅力を引き出そうとしているヴィーナスの姿勢を認めないわけでもないのだが、やっぱりそのミュージシャンに一番合っているスタイルで演奏してもらうのがなによりでしょうな。そんな意味では3曲目の「Get Back Jack,Do It Again」(なんとスティーリー・ダンの曲のようだ)、自作曲の4曲目「Kelly Colors」、ウエイン・ショーター曲の8曲目「The Chess Players」、アフロ調な10曲目「Summertime」はかなりマッコイしていていい感じなんだけど、他の曲はやっぱりメイバーンのカラーには合わないような気がする。まあそんな曲が1曲か2曲しか入っていないのであればいい気分転換にもなるのだが、何せメインがこちらの方なので戸惑ってしまう。アルバムのタイトルが「恋に恋して」というのからして、メイバーンのイメージとはずいぶんかけ離れていると思うしね(苦笑)。
とはいえどの曲も演奏そのものはそんなに悪くはない。中にはメイバーンが曲調がらアドリブを持て余しているような曲もあるけれど、そういう部分もむしろ非常に人間味があって好感が持てる。また共演者のジョージ・ムラーツとジョー・ファンズワースもなかなかの仕事をしていて、演奏が決してダレることがないのがいいね。
録音に関しては、最近のヴィーナスよりもこの時代の方が明らかに音がいい。こういうガッツのある音こそがヴィーナスの売りだったと思うのだが、エディ・ヒギンズをレーベルの看板にしてしまったせいか、いつの頃からか音の傾向がもっと軟なものに変わってしまったような気がする。
評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)