Ryan Kisor(Tp,Flh)
Sherman Irby(As)
Peter Zak(P)
John Webber(B)
Willie Jones III(Ds)
Rec. October 7,2007,NY (Birds Records XQDJ1005)

まずはウィリー・ジョーンズIIIにお帰りなさいと言いたい。ライアン・カイザーのバンドのドラマーは、「Donna Lee(04年)」で叩いていたグレゴリー・ハッチンソンは別格として、やっぱりウィリー・ジョーンズIIIが一番よく似合うんだなぁ。彼のピンチヒッターとして、カイザーが2004年の来日時に連れてきて以来しばらく一緒にやっていたジェイソン・ブラウンはちょっとパンチに欠けていたし、その後のジョー・ストラッサーはそこそこ良かったにしても、リズムが白っぽくて相性バッチリとは言い難いものがあった。
本作のメンバーの、ピーター・ザック、ジョン・ウェバー、復帰したウィリーはカイザーの過去作品の多くに参加しているとして、アルトのシャーマン・アービーは今回が初めて。あまり聞き覚えのない名前ではあるが、これまでにリーダー作を5枚リリースしている他に、ウィントン・マルサリス率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ、ラッセル・ガン、ロイ・ハーグローブ等のアルバムや、一時期私的愛聴盤となっていたウィリーの「Vol.1-Straight Swingin(01年)」でもやっている。カイザーとの関係はもちろんLCJO繋がりだろう。

1曲のオリジナルと、ジャズメン・オリジナルやスタンダードで全7曲。
アルバムタイトルどおりに「Cool and Hot」がテーマとなっているようだ。2曲目のマリガン&ベイカーの演奏でお馴染みの「Line For Lyons」や、3曲目のジョージ・シアリングの曲でマイルスも取り上げていた「Conseption」等、楽曲の比重としてはクールなイメージが強くなっているのだが、演奏自体は比較的熱い方なので、それでちょうどバランスが取れているような感じ。これはこれで悪くはないのだが、せっかくウィリーがカムバックしたというのに、彼が活躍しているのはアルバムの前半の方だけで、中盤以降は落ち着いた曲が続いているので、本領発揮ができない状態になっているのが残念。どうせだったらテーマなどは設けずに、もっと能天気にガンガンいって欲しかったなぁ。それでこそウィリーの存在意義があるのではないかと思うけどね。オリジナルの1曲目が一番良くて、2~3曲目はまあまあ、その後は次第に尻すぼみになっていくというのは、どう考えても選曲にも曲の配列にも問題がある。最後はいつガツンとくるのかなと思っているうちにあっけなく終わってしまうからな。だからこそのクールなのかも知れないけれど、それじゃあホットはどこに行ってしまったのということになる。まあ1曲目のオリジナル曲「Cool and Hot」のタイトルをそのままアルバムのタイトルにしただけだと言えばそれまでだけどね(苦笑)。とにかくわたし的にはホットな部分がもっと欲しかった。
カイザーはクール・ジャズの曲をやっているからといっても、あえて音数を少なくして知的なプレイをするといったこともなく、普段どおりの自分のスタイルで吹いている。またそれに対抗するシャーマン・アービーもクールという言葉とは無縁に非常に情感豊かに吹いているね。この二人は良いとして、ピーター・ザックは可もなく不可もなくって感じなので、もう少し俺が俺がと前面に出てくるような我の強い部分があってもいいと思う。
クリスクロスのカイザーのリーダー作と比べると、本作は不完全燃焼に終わっているような、なんとなく中途半端な印象を受けるね。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)