Anthony Braxton(Reeds,Per)
Chick Corea(P)
David Holland(B,Cello)
Barry Altschul(Ds,Per)
Rec. February 21,1971,Paris (CBS SONY SOPJ19-20)

生まれて初めて買った2枚組のLPは、確かマイルスの「ビッグファン」だったと思う。高校3年の時なのだが、当時はそうそう簡単にLPを買えるはずもなく、特に2枚組を買うのにはかなりの勇気が必要だった。
ちょうど時期を同じくして友人が買ったのがこの「サークル/パリ・コンサート」。お互いの家で聴き合っているうちに、友人はマイルスの方が良いと言うし、私は逆にサークルの方が気に入って、思い切って交換したという経緯がある。長いジャズ聴き人生でアルバムを誰かと交換するという行為は私としては後にも先にもこれ一回きりなので、今でも懐かしい思い出として残っている。
チック・コリアをリアルタイムでオッカケしたのは、カモメのジャケットでお馴染みのRTFからだった。なのでフリー時代のチック作品は後追いして聴いているのだが、本作がそれの第一弾。同じフリー作品の「A.R.C」や「ソング・オブ・シンギング」、あるいはそれ以前の「ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス」は社会人になってから買い集めている。
フリージャズというと退いてしまう人が多いのだが、実は私が初体験した生のジャズ・コンサートは高2の時に観た「佐藤充彦とがらん堂(佐藤充彦、翠川敬基、田中穂積で弩フリーをやっていた)」で、これによってフリージャズに対する免疫が出来ている。ぶっちゃけ何をやっているのかわけが分からなかったものの、即興的な三者のインタープレイがとにかく滅茶苦茶カッコよかったね。またドラムの田中穂積の後ろにズラリと並んでいるフライパン群やセット横の木魚(ウッドブロックだったかな?)にはビックリで、普通のドラムセットの概念をぶち破ったセッティングから醸しだす現代音楽的なドラミングの凄さには涙が出るほどに感動している。でもチックのサークルを聴いたときは「佐藤充彦とがらん堂」の原点はこれだったんだなとすぐに分かった。まあこれというよりも、厳密にいえばアンソニー・ブラクストンが入っていない「A.R.C」や「ソング・オブ・シンギング」の方なんだけどね。いずれにしてもがらん堂がチックのフリー作品に大きく感化されていたトリオだったのは間違いないだろう。特に田中穂積なんかはもろバリー・アルトシェルと化していたね。

というわけで私の中では「佐藤充彦とがらん堂」と微妙に被っているサークルなのだが、正直言って本作の1曲ごとの音楽的な記憶はあまりない。ただ1曲目の「ネフェルティティ」からしてすでに異様な世界に引き込まれたということと、「トイ・ルーム」におけるアルトシェルのドラムソロの異常なまでのカッコよさは、いまだに忘れることができないでいる。音楽をやっているというよりは、どちらかといえば4人が対話しているという印象が強かったかな。また実験的な要素も多大にあったね。フリージャズではありながらも非常に知的なのがいかにもチックらしかったなぁ。でもチック本人にしてみれば、この手のサウンドにはもはや限界を感じていたのだろう。アルバムがリリースされた時点でサークルはすでに解散していたようだし、RTF以降もフリー的な手法は完全に封印していたものね。とはいえ最近になってからはまたぞろ曲の途中にちょこっとフリーな要素を取り入れたりして、この時代を懐かしんでいるようにも見受けられるけどね。いっそのこと遊びでもいいので、またフリージャズの作品を一枚作ってくれると嬉しいな。もしブラクストンやアルトシェルが健在で、今でも第一線で活動しているのであればもちろんこのメンバーでね。まあ若手を起用してもいいけれど、そんな話があればきっとデイブ・ホランドだけは真っ先に乗り気になるだろう。彼の場合は音楽の根底にずっとフリーの要素が息づいているからね。
となんか取り留めのない話ばかりで失礼しました(苦笑)。