Mike Mainieri(Vib)
Michael Brecker(Ts)
Don Grolnick(P)
Eddie Gomez(B)
Steve Gadd(Ds)
Kazumi Watanabe(G)Disk2、B1
Rec. December 14&16,1980,Live at the Pit Inn,Tokyo (Better Days YB7010/11ND)

ステップスにはあまりにも思い入れが強すぎて、原稿が気に入らなくては書き直すといった状態がマイケル・ブレッカーが亡くなってからかれこれ1年ぐらいも続いている。でもいくら書き直しても納得することはないだろうな。これだって自分がいやになるほどの駄文だしね(苦笑)。
本作は六本木ピットインに於けるライブ・レコーディング。ステップスとしての実質的なデビュー盤ではあるが、その下地はすでにブレッカー兄弟が経営するナイトクラブ「セブンス・アベニュー・サウス」での、NYのスタジオミュージシャンのファーストコールたちが仕事帰りに集まっては繰り広げていたジャムセッションで出来上がっていたのではないかと思う。そんな彼らを招聘した当時の日本のレコード会社、プロデューサー等の製作陣やプロモーターはパワーがあったというかなんというか、美味しそうな企画をどんどん実現させていて、本作に限らずリー・リトナーのジェントルソウツ、深町純のNYオールスターズ、ナベサダのGJTとの共演や武道館コンサート、渡辺香津美の「トチカ」等、とにかくみんな凄かったね。それには日本自体が経済的に世界をリードしていたという時代背景もあったのかもしれない。
ステップスは続く「ステップ・バイ・ステップ(81年)」と「パラドックス(82年、ドラマーはスティーブ・ガッドからピーター・アースキンに交代している)」をリリースした後は、エレクトラ・ミュージシャンに移籍すると同時にステップス・アヘッドと改名。ドン・グロルニックが抜けて新進気鋭のイリアーヌが参加し、サウンド的にはこのあたりからエレクトリック色やフュージョン色が強くなっている。カッコいい4ビートジャズをやろうということで結成されたステップスではあるも、3作品でもうやりたいことはみんなやり尽くしただろうし、元来が新しもの好きな彼らのことなので、もっとナウいサウンドを追求したくなったのだろう。
私が仙台で生で観たのは1982年。ちょうどアースキン入りの「パラドックス」の頃だった。ストレート・アヘッドでギンギンな4ビートジャズをやっていて、まだエレクトリックなサウンドに突入する前だったけど、それでもマイク・マイニエリは曲によってはすでにエレクトリック・バイブを使っていたかなぁ。その辺の記憶は定かではないが、個人的にはステップスはステップス・アヘッドに改名してからの時代も含めてこの時代が最高だと思っている。でも衝撃度に関してはやっぱり1作目の本作にはかなわない。なんといってもメンバー各人の最高のプレイが聴けるからなぁ。特にガッドに関してはこれで燃え尽きてしまったのか、彼が叩いている以降のアルバムは言葉は悪いけどなんか腑抜けのように聴こえてしまって、そのせいで私のガッド熱は急激に醒めている。そうこうしているうちにデイブ・ウェックルが登場してきて、嗜好はそちらの方に移ってしまったしね。
本作が録音された1980年前後は、ハンコックのVSOPやウィントン・マルサリスの出現等で、それまで方向性を見失っていた4ビート・ジャズのシーンがにわかに復活してきた頃。それに同調するかのようにフュージョン界のスーパースターである彼らがステップスとして真摯に4ビート・ジャズに取り組んだわけだが、それが皮肉にもフュージョン全盛の時代に終止符を打つきっかけにもなっている。フュージョンにうつつを抜かしていたジャズメンの中には、本作で目が覚めた人もいたのではないかな。そんな意味でもとても重要な作品で、ジャズの歴史の中にもキッチリと組み込むべきだと思っている。
と前置きがかなり長くなってしまったです。

2枚組で全8曲。
演奏がどうこう言う前に、まず観客の熱狂ぶりが凄いよなぁ。中にはフュージョンをやると思って勘違いして観に来た人もいると思うけど、そんな人たちもこのクールで現代的で、それでいながら思いっきり熱い4ビート・プレイにはきっと度肝を抜かれたことだろう。お客さんたちがステージと一体化していて、掛け声やら拍手やらで過剰なまでに盛り上がっている。ジャズの演奏でこんなに観客が熱くなっている日本のライブ盤は後にも先にも聴いたことがないね。観客としてあるべき姿がここにはある。
演奏の方はといえば、とにかくどの曲もみんな凄いっす。なんてったって1曲目の「Tee Bag」からもうかっ飛びだもんね。テーマが終わってドン・グロルニックのアドリブに突入する直前の、スティーブ・ガッドのオープンロールのところでまずは軽い第一波が押し寄せてくるのだが、初めて聴いた時にはこの部分だけですでにいっちゃった。やはりガッドが気合が入っているのといないのでは演奏の出来栄えが全く違ってくるよね。
といかにも今聴いているかのようだけど、実はLPは聴くことができないし、買い足したCDも段ボール箱行きになっているので記憶だけを頼りに書いている(苦笑)。なのでアドリブの順番とか、誰がどの場面でどうだったとかの細かいことは定かではないけれど、マイケル・ブレッカーが素晴らしいテクニックを駆使しながら、これでもかというぐらいにブロウしまくっているのには圧倒されたっけなぁ。こんなに熱いマイケルにはそうそうお目にかかれるものではない。彼には数多くの名演があるけれど、本作でのプレイも10指に入るぐらいに凄いっすよ。そしてリーダーのマイク・マイニエリの現代的なバイブのカッコよさといったらありゃしない。特にバラード曲での泣きのプレイには聴き惚れてしまうね。またグロルニックのガッドを挑発するかのような美味しいフレーズの連発は目茶苦茶カッコよかったし、ゴメスにしても当時これだけ弾けるベーシストはそんなにいなかった。でもわたし的にはなんといってもガッドの鬼気迫るようなドラミングにノックアウトされたんだけどね。
大好きだった曲は、初っ端の「Tee Bag」、サンバと4ビートの混合ブルースの「Fawlty Tenors」、しっとりと落ち着いた「Lover Man」、思いっきりの泣き曲の「Saras Touch」や「Song to Seth 」、ウェザーリポートの(というかジョー・ザヴィヌルの)佳作曲を4ビート・アレンジで超カッコよくした「Young And Fine」、そしてゲスト参加の渡辺香津美が焦りまくって弾いていて、後半のガッドのドラムソロが圧巻の「Not Ethiopia」といったところかな。ってほとんどの曲だけどね(笑)。
本作は説明不要の超名盤なんだけど、ジャズの王道的な路線からいくと裏名盤的な存在なのかもしれない。当時は批評家のお偉方たちにスウィングしていないだのなんだのとけっこう叩かれていたからなぁ。でもこれを聴いて狂喜していた私たちの方がむしろ先見の目があったのかもしれないね。本作やチック・コリアの「スリー・カルテッツ」あたりが、それ以降の4ビート・ジャズの大きな指針の一つとなっているのは今となっては明白だ。
本作に関してはまだまだ書き足りないことはあるけれど、なんとかマイケル(2007年1月13日死去)の命日に合わせてアップすることができたのでよかったです。改めて合掌!あっ、ついでにドン・グロルニックにも合掌です。大好きなピアニストでした。