Chick Corea((P,Syn,Key)
Gayle Moran(Vo)
Stanley Clarke(B)
Steve Gadd(Ds)
Don Alias(Per)
Jean-Luc Ponty(Vln)
etc.
Rec October 1976,CA (Polydor MPZ8103/4)

久々の「懐かしの一枚」コーナーです。
チック・コリアのソロ名義でリリースされたファンタジーな三部作の2作目がこの「マイ・スパニッシュ・ハート」。前にレビューしている他の2枚(「妖精」「マッド・ハッター」)と同様に大好きな作品である。20歳前後という多感な時期に聴いたせいもあって、本作で繰り広げられているもろスパニッシュな音世界にはかなり感化されている。
この3枚に共通しているのはチックの音楽性の素晴らしさはもちろんのこと、スティーブ・ガッドが超カッコいいんだなぁ。当時のガッドは次々と新しいリズムパターンを開発していたけど、それが最も効果的に活かされていたのがチックの音楽で、もうこれ以外のドラミングは考えられないほどにサウンドにバッチリとハマっていた。この後の「フレンズ」とか「スリー・カルテッツ」なんかもそうだしね。だからこそのガッドの起用なんだけど、もしもRTFのレニー・ホワイトが叩いていたら、ここまで完成度の高い作品にはなっていなかったと思う。まあRTFはRTFで最高にカッコいいことをやっているけどね。

チックのソロ名義のアルバムとしては初の2枚組み(グループとしてはサークルの「パリス・コンサート」がある」)。ラテンの血をひくチックは、それまでにも「ラ・フィエスタ」や「スペイン」といったスパニッシュ調の曲を作っているが、本作もまたタイトルやジャケットからも分かるように、スパニッシュなサウンドを前面に打ち出している。
1枚目のA面1曲目の「ラヴ・キャッスル」の愛に満ち溢れていながらも厳しさも持ち合わせているサウンドからしてもう素敵だよね。ゲイル・モランの天使のような歌声やブラスセクションがところどころに入っているけれど、基本的にはチックとガッドのデュオがメインとなっている(バックでドン・アライアスが小間物をシャカシャカやっている)。スパニッシュなフレーズが随所に現れるチックのアコピに、ベース代わりに弾いているシンセ音と、ブラシを使ってソフトタッチにプレイしているガッドのサンバ調のドラミング(スネアが右手でハイハットが左手のいつものパラディドル風なパターン)がとてもよくマッチしているね。2曲目からはガッドはお休みで、スタン・クラークやストリングスが参加。フラメンコの手拍子や足拍子を取り入れながらのもろスパニッシュな曲調が続く。この部分はほとんどチックの一人舞台なのでちょっと退屈だけど、その後のガッドが入っていてメチャクチャカッコいい5曲目「ナイト・ストリート」を聴くための、通らなければならない儀式的なものだと思えばどうってことはない。
それはB面も同じ。やっぱりラスト曲の「ウインド・ダンス」(この曲は「妖精」に入っていた「ナイト・スプライト」によく似ている)まではちょっと退屈だ。でもこういう部分があるために、「ウインド・ダンス」のカッコよさがよりいっそう引き立つんだよね。
2枚目のA面は1曲目の「アルマンドのルンバ」以外はなんとなく退屈な面なので、ほどんど聴いていないっす(苦笑)。
で聴きどころはなんといってもB面の「スパニッシュ・ファンタジー組曲」。この楽曲の素晴らしさはもうお見事としかいいようがない。この面は当時よっぽど聴き込んでいたと見えて、いま買い足したCDを聴きながらこれを書いているけれど、チックの難易度の高いフレーズまでをもちゃんと一緒に口ずさむことが出来たです。
今聴いても音楽的に全然古臭くない。やっぱりチックは凄い人ですな。