Wynton Marsalis(Tp)
Walter Blanding(Ts,Ss)
Dan Nimmer(P)
Carlos Henriquez(B)
Ali Jackson(Ds)
Jennifer Sanon(Vo)
Rec. June 28-29,2006 NY (Blue Note 73675)

タイトルが長すぎて入りきらない。正確には「From the Plantation to the Penitentiary 」です。
う~ん、ジャケットからしてすでに問題作のような臭いがプンプンするねぇ。ウィントン・マルサリスの場合は1989年の「The Majesty of the Blues」以来、とっつきにくい作品が周期的にリリースされているので要注意。もちろん大好きなトランペッターなので、どんな作品であっても買わないわけにはいかないのだが、できればライブ盤の諸作品のように単純に楽しめるやつの方がいいなぁ。とはいうものの7枚組みの「Live at the Village Vanguad(99年)」はまだ3枚しか聴いていないけどね(苦笑)。そもそも7枚組みなんて常識外れだっちゅうの。その割にはキース・ジャレットの「At the Blue Note/The Complete Recordings(95年)」の6枚組みは、なんの抵抗もなく2~3日で一気に聴けちゃった記憶があるけどね(笑)。

全7曲がウィントンのオリジナル。4曲にボーカルが入っているが、1曲目の歌詞の中に「from the plantation」とか「In the heart of freedom」とかあることから察すると、またそれ系のことがテーマとなっているのかな。黒人の史実を音楽で表現したいという気持ちはよく分かる。ただどうだろう。ウィントンの場合はあまりにも過去に執着しすぎではないかと思うんだけどな。じゃあ先住民のインディアンのことはどうなのよってこともあるしね。過去を振り返ることは確かに大事だけど、それよりもウィントンにはジャズの未来の良い指針となってくれることを望む。今の時代は彼を中心にアメリカのジャズは動いているんだからね。
まあ1曲目は確かに重いテーマを持っているのだが、2曲目3曲目と聴き進むにつれてそれは感じなくなった。
今回のアルバムの中で大きな位置づけとなっているジェニファー・サノンの白人女性的な声質は、1曲目では歌詞に込められているであろう重要なメッセージが全く伝わってこなくて、もっと黒人特有の太い声の人が歌うべきではなのと思ってしまうのだが、他の曲ではむしろこの軽さがちょうどいいね。
随所で披露しているウォルター・プランディングの主にソプラノでのノンブレス奏法、「ソルト・ピーナッツ」風な曲調の5曲目でのウィントンの高速フレーズ等、演奏には聴きどころがそこそこある。でもこのメンバーで(ボーカル抜きで)もっとストレート・アヘッドなジャズをやってくれた方がよっぽどいいけどなぁ。ジャズは確かに芸術性のある音楽ではあるけれど、決して芸術そのものにはなってほしくない。本作には「芸術」の臭いがプンプンするね。きっと何かのアカデミックな賞をもらうのは間違いないだろう。
過去作品にあるような二度と聴きたくないというほどの作品ではないにしても、これもまたそれほど繰り返し聴いてみたいとは思わないっす。やっぱりウィントンはいまだに「Live at Blues Alley(86年録音)」の頃が一番好きだな。って、もう20年も前の作品なのか(苦笑)。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)