Bob Rockwell(Ts)
Kasper Villaume(P)
Jesper Bodilsen(B)
Rasmus Kihlberg(Ds)
Rec. June 6,2006,Sugita Theatre,Yokohama (Marshmallow MMEX112)

ボブ・ロックウェルは昨年リリースされた「Bob Rockwell/Black Jack(別頁あり)」が初体験だった。ラッキーなことに、HMVでこれを買ったときに日本公演のライブ・チケットが当たっているのだが、何せ田舎に住んでいる身なのでそう簡単には観に行けるはずもない。なんだかんだであっという間に5~6万はすっ飛ぶからね。でもせっかくのチケットを無駄にしてしまうのも勿体ない話なので、当ブログにてチケットのプレゼント企画を組んで、当選者のKenyamaさんにお願いしてライブ・レポートを書いていただいて、それを読ませてもらいながら自分でも観た気分になっていた次第です。
(Kenyamaさんの素晴らしいレポートはこちらをご覧下さい。↓)
http://www.kenyama.net/archives/2006/06/bob_rockwell_1.html
本作はその来日時の最終日に杉田劇場という場所で、真空管マイク等の超アナログ機材を使用してダイレクト2チャンネルで録音されたもの。真空管マイクは現行品もあるようだが、今となってはかなり貴重な存在だ。CD時代になってからの作品では確か1993年の「Curtis Fuller/Bluesette: Part 2」がこれで録られたのではなかったかな。甘くトロッとした音質がいまだに記憶に焼きついている。ただ真空管といってもオーディオ用アンプを例にとっても分かるように、柔らかい音から硬い音まで様々なんだよね。本作の音の傾向はどのようなものなのか、それだけでも興味深いものがある。

ジャズメン・オリジナルやスタンダード、1曲のロックウェルのオリジナルで全11曲。バックにキャスパー・ヴィヨーム・トリオを従えての演奏。このトリオでは昨年の「K.Villaume,J.Bodilsen,R.Kihlberg/Footprints(別頁あり)」がなかなか良かった。
まずは気になる音からいってみよう。ザラッとしたような乾いた音質で50~60年代のヴァン・ゲルダー録音のような質感がある。ロリンズの「サキコロ」にイメージ的には近いかな。どちらかといえば硬質な音。それがロックウェルの男性的なテナーにはよく似合っているのだが、ピアノ、ベース、ドラムスの音像が小さめに録れているので、いくぶんこじんまりとした印象を受ける。またホール感は皆無だし、各楽器の倍音も極力カットされている。そのおかげで芯のある音で録れてはいるものの、出来ればもう少し音の響きや繊細感がほしかった。それとベースが少し弱いね。これだとボディルセンの凄さはあまり伝わってこないっす。まあ昔のジャズのレコードのような音の質感に徹底的にこだわったのだとは思うが、やはり現代の録音に慣れてしまった耳からすると古臭さは否めない。(といっても実は私はいまだに「昔の録音の方が音が良い」なんて思ってる派なんですよ)ロイ・デュナンのように繊細かつダイナミックで、周りの空気感までをも捉えているような凄い音だったらなにも文句はないんだけどなぁ。
演奏の方はどうかというと、ロックウェルとヴィヨーム・トリオの主従関係がハッキリとした演奏になっている。なのでロックウェルのテナーは十分に堪能できるね。その代わりヴィヨームの方は、リーダー作のようなアグレッシブでガンガンくるようなプレイはしていないし、当然アウトなんかもしていない(そういう曲はやってない)。彼に期待して本作を買うと期待はずれに終わってしまうかもしれないな。でもこんなサイドメンとしてのオーソドックスなピアノ・スタイルもまた彼の持っている一面なので、オッカケしている人だったら買っておいても損はないと思う。ただ前にも書いているけど、ドラムスはモーテン・ルンドの方がいいんだなぁ。ラスムス・キルベリのドラミングではあまりにも当たり前すぎて、面白みに欠けるのですわ。まあそのへんの好みは人それぞれなんだけどね(苦笑)。
ボブ・ロックウェルのアルバム・タイトルは「Black Jack」「The Joker」とトランプ絡みできているのだが、次回作は何かなぁ。ちなみにkenyamaさんの予想は「Full House」、私は「Poker Face」といったところです。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)