John Hicks(P)
Buster Williams(B)
Louis Hayes(Ds)
Rec. March 10,2006 NYC (Chesky SACD318)

チェスキーのセント・ピーターズ教会録音の「The New York Sessions」シリーズももう7作目かな。クラシック的なホールの自然な響きを活かしての録音にもだいぶ聴き慣れてきた。というか自分が叩いているバンドでも、施設の講堂を借りて練習しているときなんかはこんな感じで各楽器の音が聴こえてくるので、元々そんなに違和感は感じていないのかも知れない。でもそんな音に馴染みのない人にしてみれば、チェスキーの音はかなり異質なんだろうね。
ジョン・ヒックスが亡くなったのが昨年の5月10日。本作のレコーディングからわずか2ヵ月後のことなので、これがラスト・レコーディングなのはほぼ間違いないだろう。はたして本作がラストを飾るのに相応しい作品かどうかはさておいて、それよりも本人にしてみればもっともっと演奏し続けていたかっただろうね。急な病気で逝ったとは思うけど、64歳はまだ早すぎる。

ヒックス曲1曲とバスター曲2曲を含めたジャズメン・オリジナルが主体で全9曲。
ベースの定位があまりハッキリしないのが本シリーズの欠点なのだが、今回はピアノの音も貧弱に録れてしまっている。特にドラムスがスティックを使っている時には完全にバランスが崩れて(ドラムスの音が大きい)いて、これではヒックスの遺作としてはちょっと気の毒な気がするけれど、演奏そのものはそんなに悪くはない。
まさか2ヵ月後に亡くなるなんてヒックス自身思ってもみなかったろうが、決して指がコロコロとよく動くといった饒舌なタイプではないのにアップテンポの曲がヤケに多いのは、彼が最後の力を振り絞って弾いているようにも思えてくる。
録音の兼ね合いもあってか、最盛期の頃のような男性的な無骨さがないのが少し残念。間違いそうで間違うことのない音使いにはとても人間味を感じるにしても、メンバーの組み合わせのせいも相まって、トリオの演奏の方はけっこう雑な感じに聴こえる。普段と違って大ベテランを起用しているので、これはやむを得ないことなのかも知れない。でもまあバスターもヘイズもそれなりに一生懸命に頑張ってますよ。ただバスターに関してはロン・カーター2号って感じで音程がいまいちの人なので、あまり弾き過ぎないで欲しいという人も中にはいるかもしれないけどね(苦笑)。
う~ん、ヒックスの遺作だと思って聴いていると、そんなに書くことも浮かばないんだなぁ。なにはともあれ合掌です。

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