Joachim Kuhn(P)
Michael Brecker(Ts)
Eddie Gomez(B)
Billy Hart(Ds)
Bob Mintzer(Ts)1
Rec. April 1981,NY (Another Side Of Jazz QSCA1028)

これは新譜ではありません。
昨日聴いた「Nightline New York 」のアウト・テイク集。今までお蔵入りとなっていたテイクがヨアヒム・キューン自らの監修で、実に24年ぶりに日の目を見ている。私的「幻の名盤」だった「Nightline New York 」にさらに幻の名演があったなんて、こんな喜ばしいことはないね。
本作がリリースされた2005年12月にはマイケル・ブレッカーはすでに闘病生活を送っていて、私なんかは正直言って「マイケルの新譜は今後はもう聴けないだろうな」と半ばあきらめていた。でもそう感じていた人は多かったと思う。もしかすればヨアヒムにも「マイケル・ファンのために、せめて未発表の音源でも公表してやろう」という気持ちがあったのかも知れない。いずれにしても実にいいタイミングでのリリースだった。
マイケルが吹いている過去の作品をほとんど聴いてきた身としては、彼が亡くなった今となっては、3月21日に発売されるメセニーやメルドーとやっているという新譜を唯一の例外として、あとは未発表音源を残すばかりとなってしまった。未発表ものだからといっても、どんなときにも一切手抜きをしないマイケルのことなので、きっと誰とやっていても素晴らしいプレイをしていることとは思うが、願わくばもっと多くの新譜を聴きたかったなぁ。まだまだやりたいことがいっぱいあっただろうに、こんなに早く逝っちゃうなんてほんと残念です。
私はいままでずっと「ブレッカー、ブレッカー」と騒いできた人間なので、なかなかショックから立ち直れないとは思うけど、少し落ち着いたらコブハムの「クロスウィンド」以前の時代の、まだ聴いたことのない幻のバンド「Dreams」の作品やホレス・シルバーとやっているやつでも探してみるとするかな。何度も発売中止になっている「Some Skunk Funk」のDVDも、いつまでも出し惜しみしてないで早くリリースして欲しいものですな。

ヨアヒムのオリジナルと2曲のスタンダードで全7曲。「Nightline New York 」とは2曲しかダブっていないというのが嬉しい。
決して未発表にありがちな「残りカス」ではなく、やはりここでも全員が一丸となってのそうとうにテンションが高い白熱の演奏が繰り広げられている。
スタンダード・ナンバーの「Misty」と「Cherokee」は、ヨアヒムがNYの面々とレコーディングするに当たって、メンバーの様子見のためにセッションがてらに一番最初にやったのか、それとも中休みなのか、予定していた曲が一通り終わった後にまだスタジオの借り上げ時間が余っていたので余興的に演奏されたのかが興味深いところだが、ヨアヒムもマイケルもお互いに刺激を受けてライバル意識まる出しで、もの凄い速弾き大会になっとりますな。というかこの時のレコーディングそのものが全編に渡ってそうなんだけどね。
3曲目の「Yvonne Takes A Bath」のテーマ部分に関しては「Nightline New York 」での演奏の方がいいなぁ。本作の方がファースト・テイクでないかな?難解なテーマなのでハートがまだポイントをよく理解できずに手探り状態で叩いているって感じ。でもアドリブに突入してしまえばそんなことは気にせずに、容赦なく全員ガンガンいってるけどね。
超高速テンポの5曲目「Cherokee」は、あまりの速さにハートがついていくのに一苦労。きっとこんなに早いのをやったのは生まれて初めてなのだろう。
昨日「Nightline New York 」の記事を書いたばかりなので、これ以上あまり書くことも見当たらないが、やはり本作「Sarvivor」とは2枚でワンセットでしょうな。
80年代初頭の最もアグレッシブにブロウしまくっている時期のマイケル・ブレッカーの魅力を十分に堪能できます。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)