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Steve Turre(Tb,Shells)
Stefon Harris(Vib)
Akua Dixon(Baritone Vln)1,2,4
Xavier Davis(P)
Gerald Cannon(B)5-9
Peter Washington(B)1-4,10
Dion Parson(Ds)
Rec. April 19,2006 NJ (HighNote HCD7159)

スティーブ・トゥーレはトロンボーンの他にホラ貝も吹いてしまうというなかなかユニークな存在である。抜群のテクニックと独創性を持っているので大好きなトロンボニストの一人なんだけど、音楽的にけっこう幅広い人で、逆にその辺が好き嫌いの分かれ目となっていたりもする。色もの的な要素も強いので私もたまに「なぬ~?」となることがありますな(笑)。
トゥーレのトロンボーンを聴いていつも感じるのは、メキシカンの血も混じっているためかとてもリズミカルだということ。まずはリズムありきの人なんだな。なので数音しか出ないホラ貝でもけっこう遊べちゃったりもするのだが、もちろんそれだけではなしに場面によってはよく歌う。特にバラードやブルースでのミュートプレイなんかは本当に声を出して歌っているように聴こえるほど。このリズムとメロディがうまくバランスが取れているところが素敵なんだよだぁ。
彼のサイトを見るとリーダー作は本作を含めて9枚出ていて、私はその内の6枚を所有しているが、彼のアルバム自体にはこれという決定盤がないような気がする。
ちなみにトゥーレはヴァーヴからテラークへと移籍して、前作の「The Spirits Up Above(04年)」からはどうやらハイノートに落ち着いているようだ。

スティーブ・トゥーレの6曲のオリジナルの他に、ステフォン・ハリス、グレチャン・モンカー、カーティス・フラー曲が各1曲と「マイ・ファニー・バレンタイン」で全10曲。ハイノートに移ってからの傾向だと思うが、心持ち純ジャズ色が濃くなっているのが嬉しい。
本作はほとんどの曲のテーマをトゥーレとハリスのバイブがユニゾンでやっているので、ホットな演奏の割にはサウンド的には幾分クールに聴こえるところもある。
全編に渡ってトゥーレの魅力がタップリで、いつものごとくあらゆるテクニックを駆使して自由奔放に吹きまくってはいるものの、他にバイブとピアノがいるし、曲によってはバリトン・バイオリン(珍しい楽器だね)も入っているので、その分アドリブは短め。でも腹八分目って感じでむしろちょうどいいのかも知れない。
ハリスとデイビスもそれなりにいい仕事をしているし、キャノンとワシントンの弾きかたの違いなんかも楽しめたりする。パーソンはドラムの音がちょっと軽いかな。なんかカール・アレン風な音だけど、もっとガツンときてくれた方がこのアルバムには合っていると思う。
どの曲も素敵な演奏で捨て曲は1曲もないが、個人的にはジャイアント・ステップスのコードをパクッたアップテンポな8曲目「Steppin' Out」と、リズム&ブルースな9曲目「Da Blues」(どちらもトゥーレ曲)が特に気に入った。
これってバン・ゲルダー録音なのだが、つい先日酷評している「Louis Hayes/Maximum Firepower(別頁あり)」と違って、本作の音はなかなか良いんだよねぇ(苦笑)。まあ相変わらず加工臭があることは確かなんだけど、いつもこれぐらいで録ってくれたら何も文句はないですな。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)