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Carlos Santana(G)
Mahavishnu John McLaughlin(G)
Khalid Yasin(Larry Young)(Org)
Doug Rauch(B)
Billy Cobham(Ds)
Don Alias(Ds)
Jan Hammer(Ds)
Armando Peraza(Congas)
Mike Shrieve(Per)
Rec. 1972.11~1973.5

本作を「Love Devotion Surrender」なんて言われても全然ピンとこないっす。陳腐かも知れないが、やっぱり邦題の「魂の兄弟たち」の方がシックリくるんだな。前にも書いたけど、70年代の日本語タイトルを考えた人たちは本当に素晴らしい感性を持っていたと思うよ。
さて、向うの国の人たちは東洋の宗教・哲学・思想に神秘を感じるなんてことをよく耳にするが、実際にそれにドップリ嵌るミュージシャンも多いわけで、ジャズではジョン・コルトレーンがいい例だった。そのコルトレーンを敬愛しているカルロス・サンタナとジョン・マクラフリンもコルトレーンに近づきたい(というか神にかな)がために、偶然にも共にインドのスリ・チンモイという導師から教えを請うている。ちなみにマクラフリンがマハビシュヌという名をチンモイ師から授かったのは周知の事実だよね。2人ともチンモイ師からは主にその精神性を学んだのだと思うが、マクラフリンに関してはそれが高じて、世界で最も難解な音楽のインド音楽にまで行っちゃってるので、これは究極の姿勢といっていいだろう。
このサンタナとマクラフリンの共演作はチンモイ師からの提案だったようだ。本作がレコーディングされたのはサンタナは「キャラバンサライ(別頁あり)」マクラフリンは「火の鳥(別頁あり)」と、今になってみればお互いの最高傑作の直後。
メンバー的にはサンタナ側からはダグ・ローチ、アーマンド・ペラザ、マイク・シュリーブ、そしてマクラフリン側からはカリッド・ヤンシ(ラリー・ヤングの変名)、ビリー・コブハム、ヤン・ハマーが参加している。あれっ、ドン・アライアスもいるじゃない。これもサンタナ絡みかなぁ。面白いのはハマーがドラムを叩いているのと、ドラマーが余ったためかシュリーブがパーカッションに回されていること。

曲はコルトレーンの「至上の愛」「ネイマ」、マクラフリンの「神秘なる生命」「瞑想」、トラディッショナルの「神の国へ」と思いっ切り宗教色が強いので一瞬引いてしまいそうなタイトルではあるが、演奏自体はラテンロック、あるいはジャズロックとなんら変わりはないので違和感なく楽しむことが出来る。
全編に渡ってサンタナとマクラフリンのバトル(掛け合い)を堪能できるが、やってることは普段と変わらないにしても指の動きだけはいつもより妙に速いサンタナも、執拗にインド調のフレーズで攻めまくっているものの、こころなしかチョーキングやフィードバックが多く感じるマクラフリンも、お互いへ歩み寄ろうという気持ちと、いい意味でのライバル意識が剥き出しでなんとも滑稽だ。
「神の国へ」でのサンタナのソロのところでジョージ・ベンソンの「ブリージン」のフレーズが聴こえてくるのが不思議。だって向うはこれのずっと後だからね。もしかしてベンソンがパクっちゃったかななんて調べてみたら、元々はボビー・ウーマックの曲だった(苦笑)
このアルバムは2人のギタリストが主役で、他のメンバーのソロ・スペースといったものは全くないのだが、それでも「神秘なる生命」で叩いているコブハムだけは、ギターに負けじと張り切っている。
「キャラバンサライ」や「火の鳥」と比べるとターンテーブルに乗る機会は圧倒的に少ないレコードだったけど、買い足していたCDをこうしてタマに引っ張り出して聴いてみるとそんなに悪くはないな。でもパワーのある演奏を録りきれなかったのか、音は飽和状態で歪んでしまっているけどね。