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Jeff Hamilton(Ds)
Tamir Hendelman(P)
Christoph Luty(B)

強列なスウィング感で理屈抜きに楽しめるのがジェフ・ハミルトンのピアノ・トリオである。
故レイ・ブラウンのよき相棒として数多くのレコーディングに参加、またジョン・クレイトンとの双頭ビッグバンドの活躍ぶりはみなさんよくご存知であろう。90年代中頃からはジェフ・ハミルトン・トリオとしての活動も多く、MonsやこのAzicaなどからアルバムを6~7枚リリースしている。
彼がメンバーを選ぶには一種のこだわりがあるようで、まずベーシストは音が太くてブンブンしていること。決してロン・カーターやエディ・ゴメスのような弦高が低く音がペラペラな人たちとはやらない。長くレイ・ブラウンとやってきた人なのでこれは当然だろう。またピアノについてはエバンスのように内にこもったりハンコックのようにアウトするのはダメで、ピーターソンのようなカラッとした単純なタイプを好んでいる。なのでメンバーは代わってもバンドカラーはほとんど変わらないというのが大きな特長だ。

本作も他のアルバム同様スタンダードが主体だが、全曲きっちりとアレンジされていてキメなんかもけっこうある。セッション感覚で「せーの」でやるのとは違ってやっぱりこういうのってカッコいいよなぁ。聴き飽きている曲でもまた違った感じに聞こえるしね。
ドラマーがリーダーの場合は曲をやるに当たってはまずリズムやテンポありきなので、聴いてて全然飽きることがないが、今回はミディアム~バラードの落ち着いた感じの曲が多いかな。
ハミルトンはスティック、ブラシ、手叩きと、曲によって手を変え品を変え叩いているが、決して叩きすぎることなくちゃんとトリオとしてのバランスを考えている。それでいながらも最大限に自己表現をしていて、まさにドラム職人って感じでいつもながら素晴らしい。ちなみにダイアナ・クラールのライブ・イン・パリのDVDを観てビックリしたのは、ブラシからスティックに持ちかえる(又はその逆)スピードの速さで、おそらく0.2~3秒ではないだろうか。全然気づかないうちに持ち替えていて、とても人間ワザとは思えないんだな。それとタム回しなんかも異常に手が速いし。
と好きなハミルトンのことなので、ついついドラムのことばかり書いてしまいそうになるけれど、演奏そのものは全然ドラムドラムしていないので、当たり前にピアノ・トリオのアルバムとして楽しむことができる。
もちろんタミール・ヘンデルマンもクリストフ・ルティも相当な実力を持っているのは言うまでもない。
生々しいドラムの音で、録音の良さも特記しておくが、なぜか9曲目だけが音量レベルが低い。これだけ別の日に録音したのだろうか?

スウィンギーでリラックスしたピアノ・トリオが好きな方にはこれなんかはうってつけでしょう。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)