Chick Corea(P,Key)
Eddie Gomez(B)
Anthony Jackson(B)
Steve Gadd(Ds)
Geyle Moran(Vo)
Joe Farrell(Ss,Fl)
etc.

私がこの世で最も尊敬しているミュージシャンはチック・コリアである。このことは私がジャズを聴き始めてからの30数年変わる事がない。有能なミュージシャンが次々と登場してくるジャズ界において、これだけ長きに渡って私の心を捉えて放さないとは、なんともはや凄い人だね。私にとっては「神様」です。
このThe Leprechaun(妖精、76年発表)はちょうどRTFの「ノー・ミステリー」と「浪漫の騎士」の間に発売されたもの。ポリドールとしては「ノー・ミステリー」がRTFとしての最後の作品(「浪漫の騎士」からはCBS)で、これはチックとのソロ契約の第一弾である。

このアルバムではチックはアコピを主体に弾いているので、RTFに比べればサウンド的にはだいぶアコースティックな感じがする。それから生のストリングス・セクションやブラス・セクションを取り入れているところは彼の新しい境地だったな。今の時代だったらシンセで代用できるのだがやっぱり本物は違うよね。ついでだが、当時のアナログシンセのなんと素晴らしいことか。ホーナー・クラビネット、アープ・オディッセイ、マイクロミニ・ムーグ、ムーグ15。ここで使用されている機材だが、これらのアナログシンセとエレピのフェンダー・ローズは今のデジタル機器と比較すればとても人間味があるよねぇ。これよりだいぶ後に登場してくるデジタルシンセのヤマハDX-7なんかとは比べ物にならないほど良い音だったな。
このアルバムは全曲いいのだが、なによりも1曲目から最後の曲までストーリー性を持たせて作られているのが素晴らしい。そしてチックのオーケストレーションがまた素晴らしいときたもんだ。
曲として忘れがたいのはまずはレノーレ。それからなんといってもルッキング・アット・ザ・ワールドとそこから移行するナイト・スプライトが最高だね。
それと重要なのがゲイル・モラン(現チック婦人)のボーカル。この澄み切った声にはチックでなくとも惚れちゃうよ。まるで女神さまだよね。オーバーダブで声を重ねているあたりはもしかすればエンヤの原点じゃないのかな。
あとなんといってもガッドのドラミングの凄さ。新しいドラムパターンのオンパレードで、よくもまあこれだけのリズムを開発できたのもだと感心する。このむずかしい楽曲郡を、楽譜を睨みながら鬼のような顔をして叩いている姿がまざまざと目に浮かんでくる。最近の「旬の終わった」ガッドしか知らない人にはぜひとも聴いてもらいたいものだね。Aジャクソン=ガッド、ゴメス=ガッドの長年のコンビはひょっとすればこのアルバムが初めてかもしれない。

わたし的にはチック・コリア・ベスト5に入る作品である。