ハーリン・ライリー(1957年生まれ、ニューオリンズ出身)のデビューはアーマッド・ジャマルのバンドで84~87年まで活動。私が初めて耳にしたのはその後のウイントン・マルサリスのMajesty Of The Blues(89年)だった。ウイントン・バンドはこのアルバムからリズム隊がハースト=ワッツ組からビール=ライリー組みにチェンジ。発売当時は問題作として賛否両論だったと思う。ジャズの原点回帰に踏み出したそのサウンドはとてもニューオリンズ色が強くて泥臭いものだったんだね。
その後もウイントンは妙に理屈っぽくなり今度はモンクやエリントンに傾倒して行くことになるのだが、彼がいくら原点回帰に一生懸命でも作られたアルバムが何となくつまらないものばかりで、今までファンだった人たちはだいぶ離れていったような気がする。音楽的には私もどちらかと言えばあまり好きな方ではなかったな。でも、ジャズの歴史の重要性を唱えたウイントンの功績はとても大きなもので、それが認められて92年にはリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラが結成され音楽監督に就任する。このビッグバンドは97年にはジャズ界初のピューリッツア賞を受賞している。
なんか話がウイントンのほうにずれてしまったが、ハーリン・ライリーはそんなウイントンと一緒にやってきた人だということである。(もちろんそれ以外でもいろいろやっているが)

彼のドラミングをカッコいいと思ったのは94年録音の大西順子のビレッジ・バンガード・ライブだったな。ベーシストは盟友レジナルド・ビール。2人ともウイントンの制約されている音楽から開放されたのか、とても生き生きと演奏していた。そのよくスウィングするリズムに乗せられて、大西のピアノもノリノリ。私としては彼女のベスト盤ですな。(最近また復帰したようで良かったな)

ドラミングの特長としては伝統的なバップドラマーの奏法と共に、ニューオリンズ音楽(セカンドライン等)の要素もだいぶ含まれている。ファンク系のビートを刻んでいるのは聴いたことがなく、あくまでも4ビートが基本の人なんだなぁ。

最近のもののおススメは何といってもPeter Beets/New York Trio Page 3(別項、05年、輸入盤)。久々のビールとのコンビで乗りにのっている。
あとStefano Di Battista/Parker's Mood(04年)もなかなかいいかな。