Jazz & Drummer

ジャズ・フュージョンの新譜や好きなドラマーのことなど音楽98%、感じたままに書いている個人ブログです。

Tommy Smith / Embodying the Light

Tommy Smith (Ts)
Pete Johnstone (P)
Calum Gourlay (B)
Sebastiaan de Krom (Ds)
Rec. April 2017, Scotland
(Spartacus Records STS025)

昔はバックのメンバーに釣られて買っていたトミー・スミスを聴くのは「Tommy Smith Sextet/Evolution(05年、別頁あり)」以来。本人のサイトを見ると、その間にもアルバムはコンスタントにリリースされているけれど、メンバーにそそられなかったりビッグバンド作品だったりして、自分の好みの方向からは遠ざかっていたところにジョン・コルトレーンに捧げた本作が登場したので、興味津々買ってみた。イギリスのジャズには疎いので、「Kit Downes Trio/Golden(09年、別頁あり)」に参加していたベースのカラム・グーレイ(?、1986年生まれ)以外のピート・ジョンストンとセバスチャン・デ・クロムは知らない人だけど(おそらく3人とも普段からトミーと一緒にやっているのだろう)、経歴等はいちいち調べるのも面倒なので割愛する。

スミス曲が3曲、コルトレーンの「Dear Lord」「Naima」「Resolution」「The Father, the Son, and the Holy Ghost」「Transition」、ガーシュウィンの「Summertime」で全9曲。
近年のコルトレーン的な演奏としては、「Doug Webb / Another Scene(14年、別頁あり)」や「Ondřej Štveráček Quartet feat. Gene Jackson / Sketches(17年、別頁あり)」が愛聴盤となっているけれど、本作も楽曲自体がコルトレーンの曲を取り上げていることもあって実にいいね。コルトレーンのスタイルをマイケル・ブレッカー風の現代的な解釈で吹いているスミスといい、ハンコック的なモーダルさとアウトのしかたが特徴的なジョンストンといい、「Impressions」のコード進行をパクったと思われるオリジナルの1曲目「Transformation」からして、目茶苦茶カッコいいことになっている。もうこの1曲だけでも買ってよかったという気分になっているのに、さらりとした演奏の2曲目「Dear Lord」もまたコルトレーンをリスペクトしつつ都会的なセンスで聴かせてくれるし、オリジナルの3曲目「Enbodying the Light」も、「Bessie's Blues」とどこが違うのというぐらいに、コード進行だけではなくテーマまでよく似た曲となっているのだから、コルトレーン好きとしては何ともたまらない。この曲ではグーレイもベースソロで大活躍しているし、続くジョンストンもハンコックにチック・コリア的なものまで加味しながら1曲目以上にカッコよく弾きまくっているし、その後のスミスもコルトレーンが乗り移ったかのように容赦なく吹きまくっているのだから、完全にノックアウト。更には「Naima」「Resolution」「The Father, the Son, and the Holy Ghost」「Summertime(アレンジが実にカッコいい)」「Embodyin the Darkness(オリジナル曲)」「Transition」が怒涛のように続いていて、しかもどの曲をとっても非常に聴き応えのある素晴らしい演奏となっているのだから(ドラムスのクロムもパンチの効いたプレイが魅力的)、こんなに嬉しいことはない。昔のスミスはどことなく線が細い印象だったけど、私が聴いていなかった12年間で見事な変貌を遂げているね。本演奏ではブレッカーと比較しても遜色ないテクニックと、自信に満ち溢れている情熱的なプレイで、至福のひとときを味あわせてくれる。
ということで演奏には文句のつけようがないし、録音(エンジニアはStuart Hamilton)も各楽器の音質、バランス共に良好で、本作は当然ながらの5つ星。スミスと同様に感銘を受けたジョンストンにも、これからは注目するとしよう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


EMBODYING THE LIGHT
TOMMY SMITH
SPART
2017-07-28


--EDIT--

Simona Premazzi / Outspoken

Simona Premazzi (P)
Dayna Stephens (Ts, Ss)
Joe Martin (B)
Nasheet Waits (Ds)
Guests:
Jeremy Pelt (Tp)4
Sara Serpa (Vo)5
Rec. April 7, 2016, NYC
(自主制作 PRE1153)

シモーナ・プレマッツィ(?)のリーダー作を聴くのはアリ・ホーニグ買いした「Simona Premazzi/Looking For An Exit(07年、別頁あり)」以来だけど、本人のサイトを見るとその間にも「Simona Premazzi and The Intruders / Inside In(10年)」「Simona Premazzi / The Lucid Dreamer(13年)」がリリースされているんだね。その中の「Inside In」はドラムスが大好きなルディ・ロイストンなので聴いてみたい衝動に駆られるのだが、本作もデイナ・スティーヴンス、ジョー・マーティン、ナシート・ウェイツに、ゲストとして「Jeremy Pelt / Tales, Musings and other Reveries(15年、別頁あり)」で共演歴のあるジェレミー・ペルトも1曲に参加(プロデュースも担当している)と魅力的なメンバーなので、これだけで我慢するとしよう。ジョアン・ブラッキーンやジェリ・アレン(6月に亡くなったのが残念)と同様、女性ピアニストとして硬派な印象のプレマッツィが、このメンバーとどういう演奏をしているのか楽しみだ。

プレマッツィ曲が7曲、スティーヴンス曲が1曲、ビリー・ストレイホーンの「Lush Life」、アンドリュー・ヒルの「Up On A. Hill」で全10曲。
非4ビートをメインとしながらのダークな曲調が続く。曲作りは比較的ラフな方で、その場の状況に応じて発展させていくような手法(場面によってはフリー的にもなっている)が取られているけれど、イマイチ面白みに欠けているのは、曲によってテンポやビートは変えていながらも、どの曲も同じような雰囲気の演奏になってしまっているから。なので私としてはホーニグが曲の持っていき方にもアイデアを提供していたと思われる「Looking For An Exit」の方に軍配を上げるのだが、だからといって本演奏が悪いというわけではなく、硬質さに加えて女性的な柔らかさも感じられるようになったプレマッツィを筆頭に、そのプレイに同調しながら自分の持ち味を存分に発揮しているウェイツにしても(ドラムソロも用意されていれば更によかったと思う)、自己のリーダー作とは少々路線が異なるものの、曲調に応じてテナーとソプラノを使い分けながらそれなりの対応力を見せているスティーヴンスにしても、ボトムをガッチリと支えている感は希薄ではあるけれど、その代わりに相手の出方に瞬時に反応しているマーティンにしても、各人がきちんとした仕事をしているおかげで、1曲1曲に関してはいい感じで楽しむことができる。4曲目「Peltlude」に参加しているペルトも流石のプレイで聴かせてくれるし、5曲目「It is Here」でのサラ・セルパのヴォーカルもいいアクセントとなっているね。楽曲的にはペルト入りの4曲目「Peltlude」と、オーネット・コールマン的な9曲目「Later Ago」(どちらも4ビート)が大いに気に入ったのだが、大好きな「Lush Life」(8曲目)をソロピアノでやっているのはちょっと残念。できればこの有名曲をバンドとしてどのように料理するのか聴いてみたかった。
ということで「Looking For An Exit」ほどではないけれど、私好みの演奏をしていることに変わりはないので、これでよしとしよう。本作は録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)も、ベースが若干不鮮明に録れていること以外は良好だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Simona Premazzi シモーナプレマッツィ
自主制作
2017-07-30


--EDIT--

Russell Malone / Time for the Dancers

Russell Malone (G)
Rick Germanson (P)
Luke Sellick (B)
Willie Jones III (Ds)
Rec. February 28, 2017, NY
(HighNote Records HCD7305)

前作「Russell Malone / All About Melody(16年、別頁あり)」と同一メンバーによるHighNoteからの3枚目。ラッセル・マローンのプレイはその間にも「Jeff "Tain" Watts / Blue Vol. 2(17年、別頁あり)」中の1曲や、「Diana Krall / Turn Up The Quiet(17年、別頁あり)」中の3曲で聴いているけれど、どれをとってもオーソドックスを絵に描いたようなプレイで楽しませてくれる。近年は8ビート系の曲なんかではエフェクターを使ってロック調に弾いていたりもするけれど、それもまたマンネリ防止へと繋がっていて、私としては好印象。本作はタイトルやジャケ写からしてダンス的なものをテーマにしているような感じだけど、考えてみるとジャズもスウィング時代はダンス音楽だったわけなので、ギターの奏法だけではなくジャズの伝統も重んじるマローンが、ダンス(現代的なものも含めて)をテーマにアルバムを作ってみようと思ったのは当然の成り行きなのかもしれない。

マローン曲が4曲と、ローランド・ハナの「Time for the Dancers」、ペギー・リー/H. Wheelerの「There'll Be Another Spring」、ホセ・フェリシアーノの「Theme from "Chico and the Man」、ビリー・ジョエルの「And So It Goes」、ボビー・ハッチャーソンの「Little B's Poem」で全9曲。
想像していたのとは異なり、アルバムタイトルとなっている1曲目「Time for the Dancers」からして特にダンスを意識したような演奏にはなっていないけど(トニー・ウィリアムスがよくやっていた「ウン・ンタタン・トン」というリズム)、ロニー・スミスに捧げたと思われるファンク調の2曲目「Leave It to Lonnie」が16ビート、南部ブルース的な臭いがする12/8拍子の3曲目「The Ballad of Hank Crawford」等、今回は4ビートの割合が少ないところをみると、いろんなビートで乗って欲しい(その延長線上にダンスがある)ぐらいの意味合いなのだろう。あるいは「Time for the Dancers」に合わせたジャケ写にしただけであって、そもそもダンスがアルバムのテーマではなかったとか。いずれにしてもどの曲を取ってもいい感じで楽しめることに変わりはないだが、マローンの上手さは当然として(2曲目のような曲ではギターのトーンを変えて弾いているのもグッド)、今回はリック・ジャーマンソンの上手さもきらりと光っているね。バッキングにしてもアドリブにしても曲調によくマッチした、いい意味でそつのないプレイが素晴らしい。またルーク・セリックのベースも的確だし、ウイリー・ジョーンズIIIも2曲目ではロング・ドラムソロで大張り切りしていて、各人が曲調の範囲内で自分の持ち味をきちんと発揮しているおかげで、バンドとしてもノリのいい演奏が堪能できる。7曲目「And So It Goes」をクラシカルな感じ(アルペジオを多用)のソロギターでやっているのもマローンにしては珍しいし、先日聴いたばかりの「Cyrus Chestnut / There's a Sweet, Sweet Spirit(17年、別頁あり)」にも収録されていたハッチャーソンの名曲「Little B's Poem」を、こちらでも8曲目でやっているのも嬉しい限り。落ち着いた曲が多いので、個人的にはもっとガツンとくる曲が1曲ぐらいはあってもいいような気がするのだが、1曲1曲が非常にいい雰囲気なので、そんなこともどうでもよくなる。
演奏自体は前作とも大きくは変わらないけど、そこがマローンのいいところ。オーソドックスな演奏スタイルは昔から確立されているので、マンネリに感じさせない限りはわざわざ変える必要もないだろう。あとはメンバーの変更でどうにでもなる。本作は録音(エンジニアはマイク・マルシアーノ、ミックスとマスターは内藤克彦)も各楽器が温かい音色で録れていて、そのバランス共に上々だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


TIME FOR THE DANCERS
RUSSELL MALONE
HIGNO
2017-07-21


--EDIT--

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