Jazz & Drummer

ジャズ・フュージョンの新譜を中心に感じたままに書いている個人ブログです

Antonio Sanchez & Migration / Lines in the Sand

Antonio Sanchez (Ds, Voice, additional-Key)
John Escreet (P, Rhodes, Prophet-Syn)
Matt Brewer (Ac-B, El-B)
Thana Alexa (Voice, Effects)
Chase Baird (Ts, EWI)
Nathan Shram (Viola on Travesia Part II)
Elad Kabilio (Cello on Travesia Part II and Long Road)

Produced by Antonio Sanchez
Executive Producer: Ermanno Basso
Recorded in New York in May 2018 at Power Station Berklee NYC by Pete Karam
Mixed by Antonio Sanchez and Pete Karam at Meridian Studios in New York in August 2018
Recording and mixing engineer Pete Karam
Mastered by Danilo Rossi
Artist photos: Justin Bettman
Cover, back cover, and pgs. 2, 10, 11 photos: Antonio Sanchez
(Cam Jazz CAMJ 7940)

1. Travesia Intro 1:23
2. Travesia (Part I - Part II - Part III) 20:08
3. Long Road 6:57
4. Bad Hombres Y Mujeres 8:43
5. Home 6:17
6. Lines In The Sand (Part I - Part II) 26:15
All compositions by Antonio Sanchez - Lyrics on "Home" by Thana Alexa
"Lines In The Sand Part I" includes a fragment of the poem "At the Wall, US/Mexican Border. Texas 2020"
written and read by Paola Gonzalez and Karla Gutierrez
"Lines In The Sand Part II" includes "Blood Country (after Safia Elhillo)"
a poem written and read by Jonathan Mendoza

前作のソロアルバム「Antonio Sanchez / Bad Hombre(17年、別頁あり)」では、ある人に対する怒りを音楽で表現したアントニオ・サンチェスだけど、その怒りは依然として収まっていないとみえて、「Antonio Sanchez / New Life(13年、別頁あり)」以来5年ぶりとなるMigration名義による本作(サックスがデヴィッド・ビニー、ダニー・マッキャスリンから、初聴きのチェイス・ベアードに交代)でも、緊急車両のサイレン音やガヤからスタートする、音楽的にも「New Life」以上に厳しさが感じられる演奏となっているのが私好み。もちろんそれだけではなく、ホッとさせるような部分もきちんと用意しているので聴き疲れするようなことは全く無いし、全体を通して雄大な組曲仕立てとなっている楽曲自体も優秀なおかげで(PMGを連想させる場面もあり)、グイグイと演奏に引き込ませてくれる。今回はトータルサウンドを重視していて、そのためのサックス奏者の変更だと思うけど、その代りに多くの曲のメロディーを受け持つタナ・アレクサが大活躍。グレッチェン・パーラトあたりと同等のコンテンポラリーなヴォイスには、より一層磨きがかかっている。またサンチェスの音楽的な意図を完全に把握しながらエレピやシンセ主体で味付けしているジョン・エスクリートと、ウッドよりもエレベの方に比重をおいているマット・ブルーワーもこのバンドにはなくてはならない存在となっているね。要所要所でのセンスのいいプレイが印象的。二人のおかげでバンドとしてのサウンドが非常にカラフルになっているし、肝心のサンチェスもいつもながらの超強力なドラミングでその凄さを魅せつけてくれる。新加入のベアードもアドリブパートは少ないものの、アレクサとの複雑なメロディーの糸乱れぬユニゾン場面(特に4曲目が聴きもの)だけでも、なかなかのやり手なことはよく分かる。楽曲は全てが16ビート系(変拍子もあり)なので、1曲ぐらいは4ビートがあってもいいような気がするけれど、それだとアルバムとしてのトータルバランスが崩れる恐れがあるので、これで正解なのかもしれない。
「New Life」も相当良かったけれど、本作の素晴らしいとしか言いようがない演奏や音楽性にも大満足。録音はドラムが湿った感じのバタバタした音で録れているけれど(他の楽器とヴォイスは良好)、やっている音楽にはよくマッチしているので、気になるというほどのものではない。当然ながらの5つ星だし、手元に未聴新譜が13枚もあるけれど、今年の私的ベスト1(12月31日発表予定)もたぶんこれに決まると思う。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Lines In The Sand
Antonio Sanchez
Camja
2018-11-16


--EDIT--

Orrin Evans and the Captain Black Big Band / Presence

Caleb Curtis (As)2, 3, 5, 6, 7 & 9
Todd Bashore (As)1, 4 & 8 
Troy Roberts (Ts)
John Raymond (Tp)
Josh Lawrence (Tp)1, 3, 4, 5 & 8
Bryan Davis (Tp)2, 6, 7 & 9
David Gibson (Tb)
Stafford Hunter (Tb)1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 & 8
Brent White (Tb)9
Orrin Evans (P)
Madison Rast (B)
Anwar Marshall (Ds)2, 4, 6, 7 & 9
Jason Brown (Ds)1, 3, 5 & 8

Produced by Paul Stache
Associate Producer: Damon Smith
Recorded Live in Philadelphia, July 20, 2016 at South Kitchen & Jazz Parlor and June 17, 2016 at Chris' Jazz Cafe
Recorded at South by Katsuhiko Naito & Michael Comstock
Recorded at Chris' Jazz Cafe by Katsuhiko Naito
Mixed and Mastered by Christopher Allen
Cover illustration by Dominique Dutton
Performance photo by Ola Baldych
Design by Damon Smith and Paul Stache
Executive Producers: Frank Christopher & Paul Stache
(Smoke Sessions Records SSR-1805)

1. The Scythe (David Gibson) 9:30 +
2. Question (Eric Revis, arr. Josh Lawrence) 8:32 *
3. Onward (John Raymond) 10:34 +
4. When It Comes (Orrin Evans) 3:16 +
5. Flip the Script (Orrin Evans, arr. John Raymond) 10:04 +
6. Trams (Troy Roberts) 11:54 *
7. Answer (Orrin Evans, arr. John Lawrence) 13:08 +
8. Precence (Josh Lawrence) 8:59 +
9. When It Comes (alternate take) (Orrin Evans) 1:21 *
Recorded Live at (+) South Kitchen & Jazz Parlor  & (*) Chris' Jazz Cafe

オリン・エヴァンスのキャプテン・ブラック・ビッグバンドものを買うのは「Orrin Evans / Captain Black Big Band(11年、別頁あり)」「Orrin Evans' Captain Black Big Band / Mother's Touch(14年、別頁あり)」以来だが、本作はこれまでのような純正ビッグバンドとは異なり、演奏場所によりメンバーを代えた10人編成ぐらいのスモール・ビッグバンド(ラージコンボ?)作品だったのは、パーソネルを見てから分かった次第。ジャケットの絵で気づいてもよさそうなものだけど、あいにくそこまでは注視していなかった。でもこれぐらいの人数であってもビッグバンドとしての機能は十分果たしているし、ライブ盤ということも相まって、どの曲をとっても豪快な演奏をしているので、そんなことはどうでもよくなるけどね。その演奏はバンドとしてのアンサンブルよりも各人のソロ(アドリブ)の方を重視していて、1~2曲目ではテナー奏者のトロイ・ロバーツが非常にエネルギッシュなプレイで大活躍。また3曲目ではトランペットのジョン・レイモンド(かな?)がよく歌いながらも華のあるプレイで聴かせてくれる。4曲目以降もロバーツやトロンボーンのデヴィッド・ギブソン、アルトのトッド・バショア等が熱いプレイを繰り広げているし、二人のドラマー(ジェイソン・ブラウン、アンワー・マーシャル?)もソロイストに触発されながらガツンといっていて、ライブはやっぱりこうでなくてはと思わせてくれる。肝心のエヴァンスも音楽監督としてバンド全体を冷静に見渡しつつ、いざというときにはユニークさとアグレッシブさが入り混じった独自のプレイで魅せつけてくれるおかげで、トータル77分の長丁場ではあるけれど、聴き終わった後にはもっと長い時間接していたいという気分になってしまった。
私好みのアップテンポの曲が多い演奏は無条件で楽しめるし(きちんと4ビートで勝負しているのもグッド)、録音も2会場でのレコーディングのわりには音質的にも音場的にも統一感が取れていて、本作の過去2作品に勝るとも劣らない出来栄えには満足している。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Presence -Digi-
Orrin Evans
Membran
2018-10-11


--EDIT--

Wolfgang Muthspiel / Where The River Goes

Wolfgang Muthspiel (G)
Ambrose Akinmusire (Tp)
Brad Mehldau (P)
Larry Grenadier (B)
Eric Harland (Ds)

Recorded Gebruary 2018
Studios La Buissonne, Pernes-les-Fontaines
Engineers: Gerard de Haro, Nicolas Baillard
Cover photo: Woong Chul An
Liner photos: Juan Hitters
Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher
(ECM 2610)

1. Where The River Goes 7:42
2. For Django 7:15
3. Descendants 5:32
4. Clearing 7:26
5. Buenos Aires 3:37
6. One Day My Prince Was Gone 5:31
7. Blueshead 7:41
8. Panorama 3:27
All music by Wolfgang Muthspiel
except "Blueshead" by Brad Mehldau, "Clearing" by Muthspiel / Mehldau / Akinmsire / Grenadier / Harland

ECMからの前々作「Wolfgang Muthspiel, Larry Grenadier, Brian Blade / Driftwood(14年、別頁あり)」や前作「Wolfgang Muthspiel / Rising Grace(16年、別頁あり)」もなかなか良かったウォルフガング・ムースピールだが、本作もECMを意識したサウンド作りとなっているのは基本的に変わらないものの、ドラムがブライアン・ブレイドからエリック・ハーランドに代わっているだけあって、また一味違った演奏が堪能できる。特にアルバムの大半を占めている静的な曲でのドラミングのアプローチがブレイドとは異なり、独創的なアイデアを繰り出しながら手数多く叩いているのが、バンドとしてのバイタリティにも繋がっていて実にいい塩梅。確かにブレイドも素晴らしいドラマーだけど、彼の場合は曲調に合わせてシンプルかつ大人しめに叩く傾向にあるので、同じ曲をやったとしてもなかなかこうはいかないだろう。このハーランドのプレイが、似たような音楽をやっている他のECM作品との差別化にもなっていて、聴いてて飽きさせないし、前作から引き続きのアンブローズ・アキンムシーレ、ブラッド・メルドー、ラリー・グレナディアも、ますますムースピールの音楽性に歩み寄ったプレイをしているおかげで、どの曲をとっても最高の気分で楽しませてくれる。ムースピールがアコギよりもエレギの方に比重を置いているのもグッドだったりして、ECMとしての枠組みの中でこれだけ良い演奏をされては何の文句もつけようがない。
ドラムがハーランドなので悪いはずがないだろうとは思っていたけれど、想像を上回る演奏には大満足だし、録音もECMにしては珍しくフランスのスタジオで行われているわりには、NYでのジェームス・ファーバー録音よりもよく感じる部分があったりして、本作を5つ星にしたい気分ではあるのだが、ムースピールはECMから離れたほうがもっと面白い演奏をすることは過去のアルバムから分かっているので、あえて4つ星に抑えておく。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


WHERE THE RIVER GOES
WOLFGANG MUTHSPIEL
ECM
2018-10-05


--EDIT--

↑このページのトップヘ

google-site-verification: google878c7206ee6d4f7b.html